« prev. next » entry

なぜ「FPS」は日本で流行らないのか? 主人格不在のプレイヤーキャラクター論

date: 2008/05/20 11:12:36

リアル系ゲームソフト,日本でも人気のある「メタルギア」

Metal Gear Solid 4(PS3)のリアルタイム・デモ

現在コンピュータ・ゲームは,家庭用ゲーム機やPCなどのハードウェアの進歩に伴って表現力を増し,ゲームソフトで目にする映像がCGによるものか実写によるものかの区別も付きにくいレベルにまでなっています.
特に最近では,来月発売予定の「メタルギア」シリーズ最新作「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」に関するニュースもよく目にしますし,「今のゲームってここまでリアルに出来るのか!」と驚いている方も多いのではないでしょうか?

「メタルギア」シリーズは,全世界合計2000万本以上を販売した人気作で,新作にも期待が寄せられています.

一方,日本では人気のない「FPS」というゲームジャンル

このメタルギアが熱狂的な人気を得る一方で,同じ「リアル系」ゲームでありながらなかなか日本で流行らないゲームのジャンルがあります.それが「FPS」です.

ファーストパーソン・シューティングゲーム(First Person Shooting, FPS)とは、シューティングゲームの一種。および和製英語。アメリカではファーストパーソン・シューター(First Person shooter)と表現する。「一人称視点シューティングゲーム」と訳される。

ファーストパーソン・シューティングゲーム - Wikipedia

Call of Duty 4ゲーム画面

「FPS」とは,より狭義にいえば,プレイヤーキャラクターの主観視点でゲーム空間を行動するアクションゲームのことを指します.特に「銃を手に敵を倒す」ゲームが多く,外国では人気のあるジャンルです.また,このゲーム性からリアルな映像が好まれ,新しい映像技術のベンチマーク的な意味合いも強いジャンルです.

しかし日本では,「FPSはすごく人気がある!」とは言えないようです.事実「Crysis」や「Call of Duty 4」などFPS的に当たり年とされた昨年でしたが,日本ではFPSファンの間でしか盛り上がっていませんでした.

FPSが日本で流行らないことについては,以前から議論されてきました.まとめると,

  • そもそもソフト自体が少ない(リアルさを求めるために開発費や期間が膨れ上がるため)
  • 銃を撃つことに抵抗がある
  • 英語だから何言ってるかさっぱりわからない
  • 視野が狭くて3D酔いする
  • PCでゲームする場合,動作環境を整えるのが大変(コスト面や技術面で)
  • FPS好きな人って,何だか人間的に怖い
  • 日本は敗戦しているから,日本目線のストーリーを作りにくい

などがよく挙げられます.

「メタルギア」と「FPS」の違い

一方で,「戦争」を題材として扱い,銃で敵を撃ち,リアルな映像を売りにしている「メタルギア」は日本でも受け入れられ人気もあります.では,メタルギアとFPSゲームの違いはどこにあるのでしょうか?

この点に関して,メタルギアは一般的にはFPSゲームではないことを,まず確認しなければなりません.メタルギアシリーズは,プレイヤーキャラクター(大抵の場合が「スネーク」と呼ばれる男)の後方頭上から彼を見下ろす視点の「TPS(Third Person Shooting)」ゲームです(ただし主観視点に切り替えることも出来ます)
一見,些細な違いのように思えますが,プレイヤーの感じ方はかなり変わってきます.

TPSにおいては,ゲームをプレイしている人(プレイヤー)が,自分が操作している主人公(プレイヤーキャラクター)を常に見ているため,プレイヤーとプレイヤーキャラクターが別の存在であると無意識的に判断できます.
例えばメタルギアでは,渋くて格好いいスネークさんを操作して,銃を撃ったりダンボールに隠れたりするわけですが,プレイヤーは「俺がスネークだ」とは思わないはずです.

FPSにおいては逆に,主観視点ゆえにプレイヤーキャラクターが自分そのものであるという錯覚を起こしやすくなります.またその効果を狙ってか,劇中では一言も言葉を発しないゲームがほとんどです.逆に,自分と同化しているプレイヤーキャラクターが急に喋りだしたら違和感があるかもしれません.
例えば有名なFPSゲーム「ハーフライフ2」には,プレイヤーキャラクターの「フリーマン」が他の登場人物から「無口な人」と言われる自虐的なネタも含まれています.

この「キャラがいない」ことが,日本でFPSが流行らない理由のひとつだと思います.

日本人に受け入れられやすい「キャラ設定」という設定

ある意味日本の文化であり,日常に溶け込んだ「アニメ」や「漫画」の登場人物は,「無口キャラ」とか「妹キャラ」などに分類され,それらの性質(=キャラクター性)に沿ったストーリーを展開していく手法が多く見られます.「キャラが立っている」や「キャラがかぶる」など,キャラクター性を表す言葉も多く存在します.
ゲームにおいてもこのスキームと同様に,登場人物にわかりやすいキャラ設定をしているものが多く,またそういうキャラクターがわかりやすいゲームが好まれているように思えます.

全国ゲームソフト販売ランキング(2008/05/05~11)
順位 ゲームソフト名 ハード名
1位 マリオカート Wii Wii
2位 モンスターハンターポータブル 2nd G PSP
3位 Wii Fit Wii
4位 リンクのボウガントレーニング Wii
5位 めっちゃ!太鼓の達人DS 7つの島の大冒険 NDS
6位 ポケモンレンジャーバトナージ NDS
7位 DECA SPORTA[デカスポルタ] Wiiでスポーツ“10”種目! Wii
8位 Wii Sports Wii
9位 ぼくらはカセキホリダー NDS
10位 大乱闘スマッシュブラザーズX Wii

ジーパラドットコムによる,今月の5日から11日までのゲームソフト販売本数トップ10は,マリオやポケモンなどのキャラクター性の高いゲームが多くランクインしています.30位まで列挙されている中で,唯一のPS3ソフト「戦場のヴァルキュリア(SEGA)」も,キャラを前面に押し出したシミュレーションRPGです.

キャラ設定の一番の利点は,想像力や理解力が欠如していると言われるゲームプレイヤーにもわかりやすいところにあると思います.例えばツンデレキャラだった場合,「シャナと同じですね,わかります」とプレイヤーが勝手に他作品のキャラに重ねて納得してくれるわけです.
むしろキャラ設定をされていない,主人格不在のプレイヤーキャラクターでは売れないということでしょうか?

結論.主人格不在という違和感を,ちゃんと理由付けしたFPSなら売れるはず!

前述のように,FPSではプレイヤーキャラクターにキャラ付けをすると違和感がありますが,キャラ付けをしないと日本で売れないというジレンマに突き当たります.

ACE COMBAT 6ゲーム画面

正確にはFPSではありませんが,FPSに近いゲームジャンルで,かつ日本でも人気のあるシリーズがあります.「エースコンバット」シリーズです.
最先端の映像技術を有する家庭用ゲーム機でリリースされ,戦争をテーマにしているなど,メタルギアと共通する箇所がいくつかあります.しかしエースコンバットシリーズでは,プレイヤーキャラクターに人格がありません.それでも違和感をあまり感じない理由は,プレイヤーが操作しているのがプレイヤーキャラクターではなく,無生物の「戦闘機」であるからです.本当ならば操作系統は「プレイヤー→プレイヤーキャラクター→戦闘機」の順ですが,ゲーム内ではプレイヤーキャラクターを飛ばして,まるでプレイヤーが直接戦闘機を操縦している感覚に陥ります.また展開されるストーリーも,主人公が無言でも違和感のないように作られています.

FPS以外では,「ドラゴンクエスト」に代表される初期のコンピュータ・ロールプレイングゲーム(RPG)の主人公が「主人格不在」なプレイヤーキャラクターの典型例です.比較的最近では「ペルソナ3」もこの一種です.これらに共通するのは,主人公が喋らないという不自然さを,他の登場人物との会話・ストーリー展開・ゲームシステムでカバーしている点です.

つまり主人格が不在であることに納得できるだけの理由付けがなされているのなら,日本でもFPSが売れるのではないでしょうか?

余談.この問題をストーリー設定で解決した「PORTAL」なら流行る?

PORTALゲーム画面

PORTAL」は,主人格の不在をゲームのストーリー設定によって見事に解決した,稀有なFPSゲームです.

この作品は「当たり年」とされた昨年発売されたFPSで,「ハーフライフ2 オレンジボックス」に同梱されているオマケ的ゲームでした.リリース後,優れたレベルデザインやストーリーから,「Call of Duty 4」や「スーパーマリオギャラクシー」を抑えて,ゲーム開発者が選ぶゲーム賞であるGDC2008のGame of the Yearを受賞しています.

http://www.youtube.com/v/TluRVBhmf8w

残念ながら知名度が低いので日本での人気をはかることは出来ませんが,プレイした人の感想を見るとおおむね評価は高いです.
個人的には,キャラ設定好きの日本のゲーマーに是非ともプレイして欲しい作品だと思います.

このエントリーで紹介したゲーム

注釈

このエントリーでは日本でFPSが流行らない理由を,「プレイヤーキャラクターに魅力的なキャラ設定がなされていないから」という持論で展開してきました.ですがもっとも大きな理由は,中段で述べている通り,日本人が銃でドンパチやらかすFPSに対してあまりいい印象を持っていないからだと思います.
この持論が,流行らない理由のホンの一部であることを理解して読んでいただけると幸いです.

参考

このエントリーは以下のリンク先の記事を参考・引用して書かれています.

no responses

there are no comments

respond